トップインタビュー

不確実な時代を、創造の力でしなやかに前進。
まだ見ぬ未来を描き、
モノづくりの可能性を世界へ広げます。
代表取締役社長 島 三博

- 上半期の総括

- 厳しいながらも「次の成長の芽」が着実に育ち始めた期間でありました。
当期(2026年3月期)上半期は、世界的な景気減速や為替変動に加え、トランプ関税の影響を大きく受けました。特に中国や東南アジアの顧客企業への影響が顕著であり、アパレル・ファッション業界全体で投資意欲が低調に推移しました。上半期後半には一部で回復の兆しは見られたものの、主要市場である中国および欧州市場での回復が遅れ、厳しい事業環境の中でのスタートとなりました。
これらの結果、上半期の連結売上高は180億92百万円(前年同期比22.5%増)、営業損失は79百万円(前年同期は営業損失19億38百万円)、経常利益は7億80百万円(前年同期は経常損失20億35百万円)となり、親会社株主に帰属する中間純利益は6億72百万円(前年同期は親会社株主に帰属する中間純損失21億24百万円)となりました。
今期は厳しいビジネス環境だからこそ、当社の技術力をより広くプレゼンテーションする好機と捉え、積極的な活動をおこないました。7月上旬にイタリア・フィレンツェで開催された高級ブランド向けの国際展示会「第97回PittiImmagine Filati」では、下半期から投入予定のコンピュータ横編機の新機種「SES®-R」を発表し、高い評価を得ました。新たなシンカーシステムなど独自技術による多様なデザイン表現が注目を集め、欧州の高級ブランドを中心に導入への期待が高まっています。編機の可能性を広げ、新しい価値を創出してきたホールガーメント®シリーズは、発売から30周年を迎え、引き続き好評を得ています。コンピュータ横編機の開発力に対する高い評価とともに、新しい時代のモノづくりを支えるツールとしての存在感を一層高めることができました。
デザインシステム関連事業では、サブスクリプションサービス「APEXFiz®」の契約数が堅調に推移。生産データへの変換機能や遠隔アップデートによる利便性が評価され、グローバル市場での存在感を高めています。一方、自動裁断機事業では、開発・製造・営業を一体化した事業部制を4月から始動。製品開発スピードとコスト競争力の向上を実現し、チーム間の連携が深まりました。顧客ニーズに即応する体制が整い、一体感のある新しい価値創造を生み出しています。こうした取り組みを通じ、上半期は厳しいながらも「次の成長の芽」が着実に育ち始めた半年であったと考えております。

- 下半期の展望について

- 市場の動きを的確に捉え、戦略的かつスピード感をもった提案活動を展開します。
下半期は、上半期に築いた基盤を確かな成長へと結びつける重要な時期と位置づけています。世界経済の不透明感は依然として続くものの、トランプ関税の影響は緩和傾向にあり、中国、欧州、東南アジアなど主要顧客地域では、設備投資再開の動きが見られます。こうした市場の動きを的確に捉え、戦略的かつスピード感をもった提案活動を展開してまいります。
横編機事業では、ホールガーメント®横編機をはじめとする高付加価値機、ハイスペックモデルの基本性能を取り入れたスタンダードモデル機、経済性と高性能を両立するベーシック機の三軸体制で市場のニーズに合わせた製品を投入し、幅広い顧客層へのアプローチを強化します。また欧州やアジアに加え、内モンゴルやインド、中東など、新興地域にも積極的に展開を拡大。ハイエンド市場とボリュームゾーンの両面で、収益性と事業の拡大を両立させます。
当社はモノづくりを支える企業として、AIの実装にも先進的に取り組んでいます。すでにデザインシステムや横編機の一部機種にはAI技術を導入しており、長年蓄積してきた編み方のデータや素材情報をもとに、最適な提案を可能にする次世代型プラットフォームの実現に取り組んでいます。こうしたAI 技術をモノづくりの基盤を支える重要なテクノロジーとして位置づけ、時代の変化を的確に読み取りながら、今後も積極的な開発・活用を進めてまいります。
当社の技術は現在、アパレル・ファッション分野を超えて新たな産業領域へと広がりを見せています。メディカル&ヘルスケア領域では、着圧ウェアやリカバリーウェアなど、健康や美容をサポートする製品の開発が進んでいます。またモビリティ領域では、自動裁断技術を応用し、軽量化・高精度化ニーズに応える新たなソリューションを提案しています。これらの取り組みは“衣”の領域を超えて社会課題の解決に貢献するものであり、当社は次なる成長の柱と位置づけ、グローバル市場での事業拡大を視野に、意欲的に推進してまいります。
こうした事業領域の拡大は、変化し続ける社会や環境のニーズに応えていく取り組みでもあります。未来は気候変動の影響により、これまで当たり前だった素材やファッションのあり方が大きく変わるかもしれません。このような未来を見据えたとき、当社が果たすべき役割は、モノづくりそのものを支える技術と仕組みを進化させ、新たな価値を生み出すことです。また環境への配慮はもちろん、人々の健康や快適さ、美しさを支える領域にも、新たな事業機会が広がっています。たとえば素材やニットの技術にセンシング機能や紫外線対策、美容効果を融合させること、あるいは糸そのものをデジタル技術と連携させることで、衣服に新たな役割を与えることができます。こうした未来志向の生産プロセスでは、「つくる」「使う」「再生する」が循環する仕組みが欠かせません。大量生産・大量消費の時代から、個人が創造を楽しみ、SNSなどを通じて発信しながら、必要なものを必要な分だけつくる時代へ。新しい時代にふさわしいモノづくりのプラットフォームを構築することこそ、当社の使命であり、未来への挑戦だと考えています。

- 株主の皆様へ

- どのようなソリューションが業界や社会の変革につながり幸せを導くことができるのか、常に問いかけ努力を重ねてまいります。
株主の皆様には、日頃より格別のご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
当社は、「創造の力で未来に幸せを」というパーパスのもと、混沌とした世界情勢に流されることなく、「未来に何が必要か」と問い続け、技術と発想をかけ合わせながら、次代のモノづくりを支え続けています。未来の幸せは自然に訪れるものではありません。われわれはどのようなソリューションが業界や社会の変革につながり、幸せを導くことができるのか、常に問いかけ、努力を重ねてまいります。当社にとって、株主のみなさまは共に未来を創る大切なパートナーです。これからも株主のみなさまのお声に耳を傾け、信頼と創造を原動力に、持続可能な社会と豊かな未来の実現を目指してまいります。引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。



